公益社団法人 長野県防犯協会連合会

防犯信州

令和6年度防犯ポスターコンクール

2024.12.17

 令和6年度防犯ポスターコンクールは、児童生徒の防犯意識の向上と防犯知識の普及啓発を図るため、令和6年10月17日(木)長野県庁において最終審査が行われました。       
 本年度は県内小学校267校、5,510点、中学校46校、970点の合計313校、6,480点の応募があり、県下警察署・地区防犯協会単位で行われた審査会を経て、最終審査対象139点の中から、厳正なる審査により、特賞6点(うち知事賞3点)、金賞、銀賞、銅賞、佳作を選定しました。

厳正な県審査会の状況 令和6年10月17日(木)県庁西庁舎110号会議室

 審 査 結 果 

 講     評 

全体講評
2023年4月こども基本法が施行されました。この法律は子どもを中心とする社会をつくるための基本となる法律です。すべてのこどもが安心して健やかに成長できるように社会全体で実現するための目的や基本理念等が明記されています。言い換えれば大人がこどもたちを幸せにするための約束や責務の具体と言えます。
こどもたちは、自分や友だちや家族、身近な人の安全や幸福を願いながら、ポスターを制作しています。こどもたちの描くポスターは、犯罪を企てている大人たちに強い警鐘を鳴らしていると言えます。大人たちはこどもたちの願いを自分事として受け止めなくてはなりません。

審査委員長 長野県美術教育研究会会長
長野市立城山小学校教頭
徳嵩博樹先生

【知事賞】長野市立三陽中学校1年 
   田中 悠希(たなか ゆうき)  

 架空の儲け話や運命的な出会いを装った巧妙なインターネット犯罪、上段と下段それぞれの人物の表情を大胆に表現することによって人の関心を惹きつける見事な作品です。投資をすれば誰でも大金を手に入れられるような錯覚に陥れ、甘い謳い文句で何度も何度も忍び寄ってくるSNS型投資詐欺を「楽してお金を儲けた」と笑いが止まらない姿と携帯電話を強調するリアルな表現。理想の相手と運命的な出会いをして心をときめかせ酔いしれている姿。
「本当?」「本物?」の問い掛けで、自分事として考えさせる文案と構図。更にどこかユニークさを感じるキャラクターの表情と鮮明な図柄と彩色や背景の配色・グラデーションが、SNSによる犯罪が身近に迫っていることを見る者に強く訴えかける力を持った優れた作品です。

【知事賞】伊那市立伊那北小学校6年 
   小松 愛美 (こまつ あいみ)

 帰宅直後子どもの背後に忍び寄るのは“犯罪という恐怖”か、それとも“家族という安心”か。携帯電話に夢中になり過ぎると、肝心な戸締りの確認まで疎かになってしまう危険を自分事として考えさせてくれる見事な作品です。家族で、家に着いたら何が大切かを考えたり、イメージしたりしながら語り合うことができる作品でもあります。
 背景に忍び寄る大人は誰かな?……同時刻に帰宅した家族なら……よかったね。でも……犯罪者ならば……。ドア越しにくっきりと浮かび上がる目から、犯罪を防ぐために気をつけたいことを対話しながら考えることができます。ドアを開ける前に周りをしっかり確認し、入室後は何よりも先に鍵を閉めることを家庭や学校等で共有することができる優れた作品です。

【知事賞】箕輪町立箕輪中部小学校5年 
   種山 葵 (たねやま あおい)

 小学生が携帯している防犯ブザーは犯罪から身を守るための大切な防犯用品であることを認識させてくれる構成力が見事な作品です。背後に忍び寄る魔の手は犯罪に巻き込まれる未来の様子。この作品から子どもの安全を守るための未然防止の教育の必要性を考えることができます。子どもの視点ならば「いつでも使えるように練習をしないとね。」大人の視点ならば「命と安全を守るための備えとして常に携帯しておきたいもの」等、日頃の確認や練習の必要性を考えることの大切さを実感することができます。文案の文字を黒で、文字まわりを赤と黄と白で強調し、さらに危険を意識してもらうための注意喚起を黄と青で強調する色と図柄の構成、人物の表情や配色の工夫により、子どもの安全を守る防犯ブザーの大切さを受け止めることができる優れた作品です。

【特賞】須坂市立墨坂中学校3年 
   小山 紗生(こやま さき)

 違法薬物が溢れている社会の深刻さを薬物が降り注ぐような構図で表現している工夫が見事な作品です。違法薬物は人生を悪い状況へ一変させる恐ろしいものです。降り注ぐ薬物が文案の「一生が」に繋がり、「崩れる」とともに「人」も崩れる……。
人が崩れる様子を訴えかけるように表現し、さらに「人物」と文案の「崩」に亀裂を入れることで薬物使用は人生の崩壊であることを、薬物の恐ろしさを細部の工夫で訴えています。一方「一生が」の文字を橙で表現している点からは、薬物依存から脱出できる救いのメッセージを感じることもできます。「崩れる」の亀裂が「崩」のみで止まっている点も、「まだ間に合う」「更生できる」と未然防止の観点とともに薬物依存に置かれている人を救済することをも意識できる、優れた作品です。

   【特賞】駒ヶ根市立赤穂中学校2年 
   谷本 幸音(たにもと ゆきね)     

 黒を基調とした背景と主題となるスマホスパッタリングの技法で表現された白と青の光の粒子のような表現から、大変な状況が発生している状況をイメージできる見事な作品です。この悪夢は絶対に起こしてはならない!絶対に阻止しなくてはならない!と社会全体の危機感を高めることを意識した構成で表現されています。携帯電話での何気ないやりとりが「消えない一生」になることがある。スパッタリングで表現された青と白は、自分の未来が消えていくような連想に導かれます。さらに携帯電話の画面がひび割れた状況からは、緊迫した重大な状況にあることを想像することができます。「軽い」と「消えない」を白字と赤枠で表現し、「一瞬」と「一生」を
赤字と黒枠で表現する工夫、さらに「一」同士をスマホの端と端でつなぐ構成等…構図の細部までこだわった優れた作品です。

【特賞】長野市立通明小学校4年 
  栁澤 なつ奈(やなぎさわ なつな)

 大人と子どもの表情、文案、画面全体から優しさ・あたたかさを感じることができる見事な作品です。子どもたちがいつも安全に登校できるのは、当たり前ではなく地域の人々のあたたかな見守りから生まれていることを再認識できます。たくさんの花たちは子どもの幸せを願う地域の皆さんの笑顔だったり、メッセージだったり…。図柄から誰もが優しい気持ちや嬉しい気持ちを感じることができるやさしさであふれています。このポスターが園や学校の玄関や教室に掲示されていれば、交通安全の大切さを素直な気持ちで受け止めることができます。すべての子どもの命を社会全体で守るという目的をあたたかな気持ちで考えることができるでしょう。子どもも大人もこんなすてきな光景が毎日続くように願っていることを実感できる優れた作品です。

 講 評 まとめ  

 防犯ポスターコンクールは、犯罪抑止という大きな役割を担っています。入選作品の広報・HP等での啓発活動を通して未然防止にもつながっています。ポスター事業に関わる全ての皆さんの願いである「犯罪のない安心で安全な長野県」の実現を目指して、こどもたちが積極的に参加している防犯ポスターコンクールの意義を改めて認識することができます。こどもの作品には見る者を惹きつけるすばらしい力があります。「長野県の犯罪をゼロにしたい」という高い志と決意は、正にこども基本法にあるこどもを中心とした社会の実現を目指す根幹と言えます。防犯ポスターコンクールを通して、すべての人の安心と安全が守られる社会の実現を強く願っています。
                        長野県美術教育研究会長 徳嵩博樹